ASEAN RYOKO (No.21) タイ国軍と王室の関係
タイ国軍は5月22日に政治的混乱の収拾を理由に8年ぶりにクーデターを起こしました。穏やかな国民性で知られる「微笑みの国」で、デモやクーデターはなぜ繰り返されるのか?
根底には貧困層(赤シャツ)対、既得権益層(黄シャツ)の長く続く階級闘争の構図があります。
赤シャツ、黄シャツの対立の背景については、既にメディアでもよく取り上げられていますので、今回はタイ国軍と王室の関係について少しおさらいしましょう。
タイ国軍は憲法が何度改正されても、国王が軍の統帥権を持つとの規定は変わっていません。つまり、軍は「国王の軍」として位置付けられています。
軍への最高指揮権を持たない首相が反発しても、国王が了承すればクーデターは事実上正当化されることになります。実際、今回もクーデター後に国王が承認しています。
立憲君主制のタイでは、国王に直接の政治的な権限はありませんが、国民から絶大な信頼を得たプミポン国王は過去幾度も政治対立を仲裁し、影響力を発揮してきました。
国王に政治的権限がなくても、軍は国王のものですから、何かあれば国王の名のもとに軍はクーデターを起こしやすい環境にあるのですね。
タクシン派が人気が高い王室との関係を良好に保てていないことで、最後には王室との関係が深い軍が出てくることになるのです。
何度も繰り返されるクーデター、その後の政権交代。
タイの一般国民も慣れっこになっているのか、今のところは大きな騒ぎには発展していません。
タイ国民は混乱を収めるための最後の手段としてクーデターを容認しているようです。
しかし、プミポン国王も86歳と高齢で、最近では表舞台に出てくることも少なくなりました。
タイ人は決して口にはしませんが、プミポン国王が亡くなった時はどうなるんでしょうか?
いわゆる「Xデー」はいつか?
タイ国内が喪に服す期間は経済活動が止まる可能性もありますので、進出企業は間違いなく
打撃を受けると思います。
カリスマ的存在が居なくなった後のタイ、本当に心配です。
2014年6月9日(月) 長井