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ものづくりQ&A <36> 「熱処理とは?その4」

ものづくりQ&A

今回は「焼戻し」についてご紹介致します。

まず焼入れした状態では、フェライト中に炭素が過飽和に固溶されているため、長時間放置していたり、軽いショックでも割れが発生します。

それは多かれ少なかれ残留オーステナイトが存在しているため、ひずみ発生の原因となります。

さらに金属組織的にも、内部応力が存在しているため不安定である為、硬いが脆くなってしまい降伏点や弾性限などが小さくなります。

このような特性を改善する目的で行うのが「焼戻し」になります。
つまり、(1)組織や機械的性質を安定化し、(2)残留応力を除去して降伏点を増加させ、(3)じん性を改善させる処理です。

低合金鋼や合金鋼の場合、焼戻しには図1に示すように3つの段階があります。

●第1段階:
80~160℃の温度範囲で、マルテンサイト変態による膨張から収縮に転じます。

●第2段階:
230~280℃の温度範囲に現れる膨張ですが、残留オーステナイトが下部ベイナイトに分解して体積が増える過程であり、残留オーステナイトが存在しない鋼やサブゼロ処理を行った鋼には認めらません。

●第3段階:
300℃近辺に現れる大きな収縮であり、立方晶フェライトとFe3Cが出現する温度です。
Fe3Cは初期の段階でフェライト中に細かい粒状で多数分散し、温度が上昇するに従い、大きな粒子に凝集するため粒子間隔が広くなり、硬さや強さは減少しますが逆にじん性が増加します。添加されている合金元素はこの温度付近で炭素の拡散を遅らせ、Fe3Cの成長を抑制するため、焼戻しの効果を押さえる働きがあります。

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参考文献
1)日本熱処理技術協会編;熱処理ガイドブック基礎編、大河出版(1983)P123